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なくということ


   啼くということ。
   腕の中、しとりしとりと湿った肌越しに熱を感じながら、声を上げること。

   泣くということ。
   一人きり、もう二度と手に入らない熱を想いながら、ほとりほとりとしょっぱい雫を漏らすこと。

   鳴くということ。
   あたしはここ、ぺたりぺたりと簡単に傷がつきそうなやわかい足で歩きながら、誰かにそう伝えるために声を上げること。


   なくということ。